【ネタバレ感想】誉田哲也・作「あの夏、二人のルカ」は、自分を好きになれない僕にとって共感できるものだった。

こんにちは、hiroです。

今回は、誉田哲也さんの小説「あの夏、二人のルカ」を読んだ感想を書きます。

あの夏、二人のルカ

誉田哲也さんの描く心理描写がとても心に響きます。

「自分が好きになれない」

「自分とは何なのか」

と考えることのある僕にとって、とても共感できました。

あらすじ


過去の自分にとらわれ、自分を好きになれずにいる「沢村遥(はるか)」は、自身の離婚を機に、東京に帰ってきた。

遥は、自分の中にある心の傷に悩まされていた。

高校時代に経験したある出来事をきっかけに、自分を好きになれずにいる遥は、東京で、ギターのクラフトショップを営む「乾滉一(こういち)」に出会う。

これを機に、遥の中で高校時代から止まっていた時間が、一気に動き出していく。

感想(ネタバレあり)


誉田哲也さんの小説は、ほぼ全部読んでいます。

今回も、登場人物の心の葛藤を、圧巻の心理描写で描いています。

読んでいくごとに、登場人物に感情移入し、物語の世界に引き込まれていく。

やはり、誉田作品は、大好きです。

ヨウの葛藤

僕が共感したのは、登場人物である「ヨウ」と呼ばれる女子高生。

この人物が、のちのち沢村遥だということがわかります。

なぜ自分がハルカなのに、ヨウと呼んでくれと周囲に言ったのか。

その理由が物語が深まるにつれ明らかになっていきます。

ヨウは、「何か欠落している自分」に恐怖を抱いていました。

言いたいことが言えなかったり、認めたいことを認められない。

そんなアンバランスな心を、なんとか普通に戻したいとしていました。

実際、そのアンバランスこそが、ヨウの個性となり、ギターセンスや歌唱力といったパワーの源になっていました。

反面、そのアンバランスな自分に苦しんでいたのも事実。

高校生のヨウにとっては、どうしていいかわからない、苦しい状況だったと思います。

大人への嫌悪

ヨウは大人になっても、自分を好きになれません。

別の何者かになりたいとさえ思ってしまいます。

特に「大人」というフレーズに敏感な気がしました。

ヨウにとっての身近な大人は、両親でした。

その両親とうまくやれていないというのも一つの原因。

根本的には、父と母に枷をはめられる自分が耐えられなかったのではなかろうかと思います。

実際、ヨウの親友である「瑠香(るか)」の母親との関係性に憧れを持ち、「直接つながっている感覚が欲しかった」とヨウは言っています。

けれどヨウの両親は、ヨウに自分のエゴを押しつけるばかりでした。

そんな大人を見てきたからこそ、ヨウは大人に対する不信感を募らせていったのだと思います。

「瑠香」の存在

ヨウは瑠香が大好きでした。

無垢な性格の瑠香に、ヨウはどんどん引き寄せられていきます。

瑠香と一緒にいることで、ヨウはこれまでの自分とは違う自分を見いだしつつありました。

しかし、ある事件をきっかけに、二人は音信不通となってしまいます。

そして,大人になったヨウは、ギタークラフトショップを営む瑠香の兄「滉一」と出会います。

そこから運命の歯車が回り始め、ヨウは瑠香と再会を果たすのです。

高校時代と変わらない表情をする瑠香に懐かしさを感じつつも、大人になった瑠香を目の当たりにし、ヨウはいつものように、自己嫌悪に陥ってしまいます。

しかし、ここでもまた、瑠香がヨウの心の支えとなってくれるのです。

人のために行動する瑠香の優しさが、ヨウの心をゆっくりと開いていくのが、感動的でした。

変わりたいけど変われない

僕もずっと、変わりたいと思って生きてきました。

かれこれ10年以上思い続けています。

けれど人間、なかなか変わることはできません。

特に一人だと、ずるずると心の闇に引き込まれるだけで、最終的に自己嫌悪に陥ってしまいます。

そんなとき、変われるきっかけとなるのが、人とのつながりだと感じます。

良いメンターとの出会いが、自分を大きく変え、人生を変えることになるのではなかろうか。

かといって、僕の周りには、身近に相談できる仲間はいません。

いや、いないと決めつけているだけかもしれない。

悩んでいるうちは、自分の周囲さえ満足に見ることができないと思います。

誰でもいいから、相談してみるといいかもしれませんね。

もうひとりの主人公「佐藤久美子」

この物語には、欠かすことができないもうひとりの重要な人物がいます。

それが、実家がレンタルスペースを営むロック娘「佐藤久美子」

久美子の快活さは、半端ない。

まさにロックといわんばかりの性格です。

久美子が他の仲間を誘い、ガールズバンドを結成するのですが、その練習のやりとりもおもしろかったです。

特に、演奏におけるベーシストの重要性を説くために、「おにぎりと茶碗」を例えにしたりするところに笑いました。

久美子自身も、このたとえが失敗だったと反省していますが、なんとかして、仲間にわかってもらうとする久美子はかわいらしかったです。

他にも、父親に、高いギターを格安で譲ってもらったときに、「ヒゲ面のおっさんより、かわいい女子高生に使ってもらった方が、ギターも喜ぶんだから」と、渋る父親を説得したりします。

サバサバしていて、快活。

とにかく読んでいて気持ち良かったです。

ラストはしっとり、そしてしんみり

ラストは,大人になって、離ればなれになっていた仲間たちが集います。

そして,高校時代に練習していた曲を演奏して幕引き。

ヨウこと沢口遥にとって、この瞬間は本当に特別だったと思います。

もちろん他の仲間たちもです。

14年ぶりに再会して、抱き合う彼女たちを見て、感動しました。

高校時代の別れ方があまりよくなかったこともあり、ヨウも緊張気味。

そんなヨウの心音がはっきりとわかるラストでした。

誉田作品は心理描写だけでない


僕は、誉田哲也さんの作品が大好きです。

ほぼすべての作品を読んで、心理描写が共感を巻き起こしてくれます。

ストロベリーナイトの「姫川伶子」シリーズや、「ジウ」などの刑事ものの小説だけでなく、「武士道シックスティーン」や、今作の「あの夏、二人のルカ」のように、青春や思春期の心を描く作品も多いです。

しかし、誉田哲也さんの作品は、心理描写だけではありません。

なんといっても、読みやすいし、わかりやすい。

本作品も、ギターの専門知識がたくさん出てくるのですが、まったく無知な僕が読んでも理解できました。

とにかく説明がうまく、読んでいてストレスを感じません。

読書を始めたいという人に、誉田作品はおすすめですね。

今後も新作、楽しみにしています。

あの夏、二人のルカ

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