AIイラストで顔などの特定の部位を強調したい場合によく使われるプロンプトとして「クローズアップ」、「フォーカス」があります。
一見、2つのプロンプトは同じ意味合いがあるかと感じますが、じつは全然意味が違います。
そこで今回は、クローズアップとフォーカスの違いを具体例を用いながら解説していきます。
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もくじ
クローズアップとフォーカスの違い
クローズアップ(Close-up)とは
「クローズアップ」は、被写体とカメラの「距離」に関する言葉です。
被写体にカメラを物理的に近づけたり、望遠レンズを使ったりすることで、特定の被写体(人物の顔、物の細部など)を画面いっぱいに大きく写したいときによく使われるプロンプトです。
- 何がどうなるか
カメラと被写体の位置関係が変わる - おもな目的
被写体を強調し、細部や感情を伝えること
クローズアップ(Close-up)の具体例
涙を流す女の子をクローズアップ
女性のくちびるをクローズアップ
猫の肉球をクローズアップ
雨粒がついた葉っぱをクローズアップ
指先で持つ透明なガラス玉をクローズアップ
どうしてもうまくクローズアップされないときは、「Close-up」、「Extreme close-up(極限のクローズアップ)」、「Macro(マクロ)」といったプロンプトを入れるとよいかもしれません。
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フォーカス(Focus)とは
「フォーカス」は、写真や映像の「ピント」に関する言葉です。
対象に焦点を合わせ、その被写体がくっきりと見えるように調整する操作を指します。
焦点が合っていない状態を「ピンボケ」と呼びます。
- なにがどうなるか
画像の鮮明さが変わる - おもな目的
どの被写体を見せるか、ピントを合わせること
フォーカス(Focus)の具体例
浅い被写界深度による人物へのフォーカス
背景を大きくぼかすことで、主役である人物の顔や表情に視線を集める、写真やポートレートで最もよく使われる手法です。
- プロンプト例:
A beautiful young woman smiling, **sharp focus** on her face, **shallow depth of field**, **bokeh** background, cinematic lighting, photorealistic anime style
- 期待される結果: 女性の顔はくっきり鮮明に描かれ、背景の木々や街並みが美しい玉ボケとなってぼけているイラスト。
マクロ(極小世界)へのフォーカス
極端な近接撮影(マクロ撮影)のように、微細な世界に焦点を当て、肉眼では見えないディテールを強調します。
- プロンプト例:
**Macro focus** on a tiny ladybug on a wet green leaf, detailed water droplets, **extreme close-up**, dramatic lighting, realistic anime style
- 期待される結果: 葉っぱの上のテントウムシと水滴が画面いっぱいに描かれ、葉の葉脈や水滴の透明感が強調されたイラスト。
被写体の一部へのフォーカス(前景ボケ)
あえて前景の一部をぼかすことで、その奥にある主要な被写体へと視線を誘導し、奥行きと立体感を出します。
- プロンプト例:
A knight standing on a mountain peak, **blurred foreground grass**, **sharp focus** on the distant figure, dramatic sunset, fantasy concept art
- 期待される結果: 手前の草がぼやけており、その隙間から見える遠くの山の上の騎士に焦点が合っているイラスト。
動きの強調によるフォーカス(モーションブラー)
動いているものに**ブレ(モーションブラー)**を加え、静止している主要な被写体を際立たせることで、スピード感や躍動感を表現します。
- プロンプト例:
A high-speed race car, **sharp focus** on the driver's helmet, **heavy motion blur** on the wheels and background, dynamic angle, realistic anime style
- 期待される結果: レーシングカーのドライバーのヘルメットは鮮明である一方、車輪や背景は横方向に激しくブレており、猛スピード感が表現されたイラスト。
特定の感情へのフォーカス(目のクローズアップ)
人物の**「目」に焦点を絞ることで、言葉にできない強い感情や心の動き**をクローズアップします。
- プロンプト例:
A girl's eyes filled with fear, **intense focus** on the reflection in her pupils, **extreme close-up**, dark and mysterious atmosphere, anime style
- 期待される結果: 瞳の奥まで詳細に描かれた少女の目が画面の中心にあり、恐怖の感情や、瞳に映り込んだ何かが強調されているイラスト。
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様々なアングルから生成した人物イラストを見たいあなたは下記の記事をご覧ください。
>>関連記事:【画像と実例あり】2.5次元のAIイラストの髪型プロンプト50選!を読む
クローズアップ(Close-up)とアングルの組み合わせ
例1:ローアングル(あおり)+クローズアップ
プロンプト例: ローアングルで撮影された、子供の顔のクローズアップ、空を背景に
効果: 子供を見上げる構図にすることで、その姿を大きく、力強く見せます。顔のクローズアップによって、無邪気さや好奇心といった感情を強調できます。見る人に、子供の視点になったような感覚を与えます。
例2:ハイアングル(俯瞰)+クローズアップ
プロンプト例: リアルなアニメスタイル、女の子の顔の**超クローズアップ**、**ハイアングルショット**(上から下を見下ろして)、柔らかな光、精細な目、繊細な表情、美しい髪の流れ、焦点が合っていないファンタジーの森の背景、映画のような照明、8K、最高品質、超詳細
効果: 女性を見下ろす構図にすることで、彼女を小さく、か弱く見せる心理的な効果が生まれます。
フォーカス(Focus)とアングルの組み合わせ
例1:ローアングル(あおり)+フォーカス
プロンプト例: ローアングルから撮影された、古いレンガ造りの建物の写真、手前の石畳にシャープなフォーカスが合っており、奥の建物はぼけている
効果: ローアングルによって、建物の高さや荘厳さを強調します。手前にピントを合わせることで、その場所の空気感や臨場感を伝えつつ、奥行きのある構図を表現できます。
例2:ハイアングル(俯瞰)+フォーカス
プロンプト例: ハイアングルで撮影されたカフェのテーブル、手前に置かれたコーヒーカップにフォーカスが合っており、奥の通りはぼけている
効果: ハイアングルによって、テーブル全体の状況を一望できます。特定の被写体(この場合はコーヒーカップ)にフォーカスを当てることで、見る人の注意をそこに集中させ、テーブルに置かれた他のもの(本やペンなど)はぼかして雰囲気を演出します。
クローズアップを使ってもフォーカスを使っても同じような画像ができ上がってしまう理由
「フォーカス」と「クローズアップ」は、AIに「この部分が一番大事だから、目立たせて!」という指示を出しているのと同じです。
1. 「クローズアップ」の指示
「被写体を画面いっぱいに大きくして」という意味。
目的:サイズで目立たせる。
2. 「フォーカス」の指示
「背景をぼかして、被写体をシャープにして」という意味。
目的:ボケを使って視線を被写体に集中させ、目立たせる。
どちらを使っても、AIは「主役の顔や物だけをハッキリ見せて、他はどうでもいい」と解釈します。
なので、AIは「被写体を大きく描いて(クローズアップ)」、「背景をぼかす(フォーカス)」という、最も主役が目立つ写真のような構図を選びがちになり、結果的に似たようなイラストがたくさんできてしまう、というわけです。
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