守り人シリーズの好きなポイントは、物語が淡々粛々と進んでいくところだ。
読み進めていくと、物語の世界に魅了され、一気に引き込まれる。
シリーズ第3弾の「夢の守り人」も、ページをめくる手が止まらなかった。
やや難しい内容だったが、作者の文章が軽快で読みやすいため、物語の世界に没頭できた。
「人の感情や運命に向き合った物語」を堪能したい人におすすめの小説である。
※ネタバレあり
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「夢の守り人」の簡単なあらすじ
“花”に囚われて人鬼になってしまったタンダが、バルサと行動を共にしていた歌い手ユグノに襲いかかる。
しかし、バルサは幼なじみのタンダと戦うことを躊躇してしまう。
なぜタンダは人鬼となってしまったのか。
そこには、タンダの師匠であるトロガイの秘められた過去が大きく関わっていた。
守り人シリーズ第3弾、物語の深みが増していく・・・。
「夢の守り人」の見どころポイント
トロガイの過去
大呪術師として名を馳せているトロガイは、昔はどこにでも居る農村の女性だった。
農家の嫁になり、子どもも3人産んだ。
しかし、「今の暮らしとは違う、別の人生があるのではないか」という思いに駆られ、そこから呪術師の道が開き始める。
物怖じせず、強引なお婆さんというイメージが強かったが、過去の心情を読み進めていくうちに、トロガイもごく普通の女性なんだなと実感した。
過去の辛さや苦しさを受け入れつつ今を生きるトロガイは、とてもかっこいいと感じた。
タンダの人鬼化
いつも優しく温厚なタンダが、人鬼と化したのはショックだった。
その状態でバルサと戦うことになったことで、さらに切なくなった。
それでもバルサがタンダを想い、「タンダを殺すくらいなら、殺されるほうを選ぶ」と明確な意志を示したのは、読んでいて嬉しくなった。
タンダとバルサはこの先、結ばれるのだろうか。
タンダのほうは間違いなくその気はあるが、バルサの気持ちがまだ読めない。
タンダのことを大切に思っているのは確かだが、恋仲となったり夫婦となるには、現時点ではイメージできない。
できれば二人はくっついてチャグムを安心させてほしいものである。
「夢の守り人」の心に刺さったセリフ
トロガイがシュガに言った言葉
眠りから目覚めないチャグムを救いたいが、現状、何か役に立てるわけではないシュガに対して、トロガイが言ったセリフ。
「すぐに役に立たないものが、無駄なものとは限らんよってね」
シュガはその後、星図から驚くような発見をすることになる。
トロガイは正しいとシュガは思った。
すぐに役立たないものが、無駄なものとは限らない。
むしろ、いつ役に立つかわからないものを追いつづけ、考えつづけるという、人の、このふしぎな衝動こそ、いつか新しいものを見つける力になるのだろう。
今やっていることに意味があるのか、役に立つのか・・・。
そればかりを考えてしまい、成果が出ないと感じるとモチベーションが下がり、やがて止めてしまう。
それはとてももったいないことである。
効率や損得を考えるのではなく、どんなことでも続けてみる。
そうすることで何かが動き始めるのではなかろうか。
このセリフを読んで、あらためて、「大切なのはどんなことでも続けること」なのだと実感した。
タンダがチャグムに言った言葉
将来、帝にならなければならないという現実に不満を抱くチャグムを、タンダは諭した。
「おれにはね、人がみんな、〈好きな自分〉の姿を心に大事に持っているような気がする。
なかなかその通りにはなれないし、他人には照れくさくて言えないような姿だけどね。
少なくとも、俺はその姿をもって生きてきた。
そして、どうしたらいいかわからない分かれ道にやってきたら、どっちに歩んでいくほうが〈好きな自分〉かを考えるんだ」
そしてチャグムの手をとった。
「最後の決断は、おまえのものだよ」
読んでいて背中を押されたような気分になった。
今の自分に迷いがある人、今の生き方に不安がある人は、一度立ち止まって自分の好きな自分、なりたい自分を考えてみてはどうだろうか。
このセリフは、悔いのない選択をするための一助となると感じた。
守り人シリーズは、読み手の心を豊かにしてくれるのではないかと思う。
僕はこの小説を読んだことで、今を生きる自分の気持ちを深く考えるようになった。
そして、今後の生き方を考えさせてくれた。
守り人シリーズに出会って良かったと本当に思う。
興味のあるあなたはぜひ一度読んでみてはいかがだろうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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