衝撃のミステリーとはこのことか。
読み進めるうちに,登場人物とともに泥沼にはまっていく。
次の展開が気になり,一気に読んでしまった小説だ。
残酷な表現もあり,心がえぐられることもあった。
けれど,人間の奥底にある闇を,垣間見ることができた。
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「ケモノの城」のラストの解釈はどう捉えるべき?
いわゆる,監禁殺人事件。
猟奇的ともいえる所業で,次々と被害者が死んでゆく。
しかし,最後の最後まで,犯人はわからない。
ラストは衝撃的。
ミステリー小説にふさわしい結末だと思った。
ネタバレになるので言えないが,こちらの思惑以上の展開になる。
作中にもあったが,監禁されている被害者は,マンションから脱出できるチャンスはたくさんあった。
けれど被害者は誰も,逃げ出すことができなかった。
否,逃げ出すことを「しなかった」といったほうが正しいかもしれない。
「学習性無力感」というらしい。
学習性無力感とは,何をやっても無駄だと思ってしまい,何も努力しなくなってしまうことらしい。
つまり被害者は,犯人に傷を負わされているうちに,逃げる気力がわかなくなってしまったのだ。
そして「この人には逆らえない」と本能的に思ってしまい,ずっと犯人の言いなりになってしまう。
現実でも似たようなことはないだろうか。
例えば学校。
ガキ大将という存在。
逆らえず,ご機嫌をとる人もいる。
そしてガキ大将が右といえば,みんな右を向かざるを得ない。
怖い先生もそうだ。
暴力を振るわれるわけでもないのに,この先生には逆らえない。
存在自体にストレスを感じてしまい,委縮してしまう。
僕が通った学校にも,胃が痛くなるほどの怖い先生がいた。
これらの例は,学習性無力感とはやや違うかもしれない。
けれど,犯人の圧倒的な支配力によって,弱者はあやつられる。
僕がこの小説で感じたことは,支配者が指揮棒を振れば,支配されている弱者は,無意識にも従ってしまう怖さがあるということ。
犯人は言葉巧みに被害者をあやつり,被害者にも猟奇的所業をさせていた。
被害者の意思など関係なしに,物事が淡々と進んでいくことに恐怖を感じた。
いろいろと考えさせられる部分も多いこの小説。
ミステリー小説のハラハラ,ドキドキ感だけでなく。
人間の奥底に眠る,得体のしれない”何か”を感じることができる。
読後,次の日になっても放心状態が続くほど,衝撃的な作品。
ぜひ,あなたも心をえぐられてみてはいかがだろうか。
(※非常にグロテスクな内容なので,苦手な人には絶対おすすめしません)
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